と、いうわけで。
無事、新刊発行できそうです、真生です~vv
タイトル 『春夏秋冬廻り』
サイズ・P B6・176P
です。詳しくは、OCCUPATIOページにて!
以下、ちょこっとだけ見本。
あ、パラレル設定なので一応、『プロポーズ~』と『夢現』も修正のうえ、載録してあります。
[7回]
「あぁ。多少は拙くても良いが、最低限日常会話くらいは話せるようになってもらいたいかな」
「そそ、そっか。ナルもジーンも普段は英語なんだよねぇ……!」
母国語が英語なのだから、日常使用する言語も当然英語だ。おそらくは、自分も兄も話すだけならば日本語に不自由をしていないために特別意識していなかったのだろうけれど、今更と言えば今更の事実に麻衣は、うぁぁぁぁ、と空いている左手で頭を抱え込んだ。日本の英語教育は話すためのものではなく受験のためのものであることが大半だから、その時点で苦手意識を持っているらしい彼女にしてみれば、会話をする、なんて相当の障害なのだろう。いつも泣きそうになりながら宿題とやらを解いている彼女の姿を思い浮かべてオリヴァーは、ふむ、と頷いた。
「じゃあ、そうだな。年末、冬休みに入ったら一度来い。それまでの、宿題にしておこう」
「し、宿題!」
「そう。その時にある程度話せるようになっていたら、どこでも行きたい場所を案内してやる」
「え、ほ、ほんと!?」
褒美があった方が、より頑張れるだろう。
そう続けると麻衣は、とたんに満面の笑顔になった。
「ほんとにほんとね!」
嬉しい、頑張る。
瞳を期待に輝かせて、頬を紅潮させて。ぴょんぴょん、と躰を跳ねさせる妻は全身で喜びを表していて、オリヴァーは僅かに面食らった。褒美なのだから、相手がしてもらって嬉しいことでないと意味がない。そう意味では思惑通りであるし、いずれ住むことになる街の様子を教えることもできるから一石二鳥の考えだとは思ったのだが、彼女の様子は予想以上だ。
「だってそれ、ナルからのデ、でーと、のお誘い……だよ、ね?」
そんな疑問が顔に出てしまっていたのか、「ぁ……!」と小さく声を上げて、恥ずかしそうに麻衣は動きを止めた。かと思うと、そっとこちらの右手を両手で包むように握りしめて、えへへ、と笑みを溢す。
「仕事とか本屋とか、買い物以外でデートなんて初めてだもん、嬉しいよ!」
あ、毎日手を繋いで帰るだけで、十分嬉しいんだけどね。
きらきら、と感情が周囲に溢れ出しそうなくらいの笑顔でそう告げる妻にオリヴァーは、そうか。としか返せない。すぐさま、そうだよ、と肯き応える彼女にどこかくすぐったい気持ちになって、けれどやる気を出させるつもりで言った言葉に対する反応で、むしろこちらが喜ばされている状況がほんの少しだけ癪な気がして彼は、くつり、とわざとらしい笑みを浮かべた。
「ということは、初デートはイギリスでで良いんだな」
「え?」
「日本にいる間は、デートしなくても良いわけだ」
「っ、えぇぇ!?」
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